香りを空間にデザインするメリットとベネフィット

香り(天然香料・精油と呼ぶ)は、植物から抽出した成分で、様々な効果効能があります。その特性を用いて、人間の感情に働きかけ、イメージした空間を作り上げていく方法があります。

香りの歴史は長く、紀元前3000年前のミイラづくりの頃から「香り」のもたらす効果は宗教儀式や医療に利用されていました。

人が「いい匂い~」と感じた時、私たちの身体ではどのような事が起こっているのでしょうか。空気中に蒸発した香り成分を鼻から吸い込むと、その情報が鼻腔から電気信号になり感情と大きく関わる大脳辺縁系に直接伝わります。さらに視床下部へ伝わり自律神経や内分泌系、免疫系に働きかけ心身に大きく影響していきます。好きな香りを嗅ぐとリラックスしたり、またやる気や元気がでるということは鼻腔から大脳へ、香り成分がダイレクトにアクセスしているから、という理屈になります。

このような香りの力を使って、空間をデザインすることが可能です。

その場の印象を人の記憶に強く残すことはもちろん、心地良い香りを店舗やオフィスに取り入れることもできます。顧客に対しては香りを通して“おもてなし”を行うこともでき、より上質で居心地の良い空間を作ることにも繋がります。

香りの数だけ持っているイメージや効果効能が異なり、足し算や掛け算で無限の可能性が広がります。空間デザインとは、その場に行くことでしか体験できない特別な経験を提供することが出来、その場ならでは個性や価値を向上させながら、より顧客との距離を近く特別なものにしていきます。大きな企業としてはアピールポイントになると考えます。

また、香りの空間デザインは、店舗や施設だけに限ったものではありません。
例えばオフィスでは、従業員のモチベーションUPを目的に香りを取り入れる企業も増えています。香りがその空間を癒すだけでなく、集中力や気分転換などにも多いに利用できます。職場でリフレッシュ出来る空間があることで、従業員にとっても、精神的な不安やストレス解消にも繋がり、結果企業にも作業効率化、離職率の低下などの還元が見込まれます。
香りを取り入れている場所で最も多いのは現状ホテルのラウンジやフロントですが、他にもオフィス(受付、会議室、休憩室、化粧室、ロッカー)、商業施設、クリニック、歯科医院、介護施設、結婚式場、メモリアルホール(葬儀場)、美容院、エステサロン、ネイルサロン、スポーツジム、スパ、温泉、教育施設(幼稚園等)など多岐にわたります。

導入施設が香りの空間デザインで期待できる効果

・その空間の質を上げ自然な流れで拡散できる
目には見えない香りですが、嗅覚を使った香りのアプローチには無限の可能性があります。例えば、イベントで香りを使った空間デザインを取り入れるとします。それだけで、普段嗅ぐことのない香りから、どんなイベントなのだろう?と来場者のワクワクした気持ちを引き出すこともできます。
会場の雰囲気を盛り上げるのはもちろん、そのイベントの印象を記憶として持ち帰ってもらえることにも繋がります。特別な経験を人は誰かに伝えたくなります。SNSの普及により、目には見えない香りが、その場を経験した人たちによって、文章や写真で説得力を持って拡散されていく効果も期待できます。

・おもてなしの気持ちを伝えられる
いい香りがする場所に対して、悪い印象を持つ人は少ないと思います。その空間にまで足を運んでくれたことを考えると、おもてなしの感謝の気持ちを、香りを通して伝えられたら。こうした目に見えない努力や改善をしている企業は、従業員やお客様からの信頼や評価を得ることに繋がります。


・待ち時間の体感を短くする(時間錯誤効果)

クリニックや美容院など、待ち時間や滞在時間が長くなる場所では、テレビやスマホを見て時間を潰すことが殆どですが、視覚からの情報刺激は時に逆に脳を疲弊させます。長い時間待たされることによって、さらにストレスや不安感が募ることもしばしばで、そんな時も香りは優しく効果をもたらします。これが「時間錯誤効果」と言って、香りでリラックスできることで、待ち時間の体感を短くする効果が期待できます。

・さまざまな香りの応用

導入エステサロン様の一例です。

エステサロンエントランスで香らせている香りを、アロマミストのノベルティとしてVIPのお客様に特別にお配りする特典を導入されています。このように、香りを物販として拡散する方法もあります。また、シーズンに合わせた香りを使ったイベントを催して新規顧客獲得のひとつのツールとして利用することも可能です。

・消臭抗菌効果

各施設でのお困りごとの上位として、空間の匂い問題が上がることがあります。不特定多数の人が出入りする空間は、コロナ禍以降、エアフレッシュの必要性を強く感じる施設様が増加しました。ユーカリやラベンダーなどの天然香料には、消臭効果や抗菌効果があり、人が集まる空間の環境改善に役立ちます。

香りがもたらす意外な効果

◎リラックス効果を高める

樹木の精油に多く含まれているαピネンという成分は森林浴効果があり、嗅ぐだけでもメンタルが安らぎます。香りとリラックスには深い関係があり、脳のα波を増やしてリラックス効果を高めます。特に天然香料と呼ばれる植物からの抽出液・精油にはそれぞれ化学的効果効能が認められており、医療教育分野などで研究が進んでいます。

◎意思決定を促す効果がある

香りのなかには、そのときの気持ちを高揚させ前向きな気持にしてくれるものもあります。視覚情報化社会の昨今、脳の疲労で、頭がうまく働かなくなってしまうことがあります。香りには、思考を一度クリアにして、決断力や集中力を高めてくれる効果なども期待できます。

◎香りでイメージを表現する(ブランディング効果)

イメージを伝えるときに、視覚や聴覚を併せて嗅覚を使うことができます。高級感や親しみやすさ、清潔感や非日常感など、香りを使って印象を操作することも可能です。

◎従業員の心身をサポート

ワーカホリックの企業戦士に多く聞かれるのが、肉体は疲れているはずなのに眠れない。睡眠の質の低下です。また、PC作業の集中力を高めたり、疲労からくるネガティブ感情の抑制など、従業員の健康管理は企業の役割のひとつでもあります。香りはお薬と違って自然に取り込むことが可能です。より快適な空間を提供することで従業員の健康を促進することにも役立ちます。

脳まで0.2秒!介護施設に香りを導入するメリット

鼻から香り成分が脳に届くまでの時間は、わずか0.2秒!このメリットは介護高齢者施設にこそ、さまざまな効果が期待できると言われています。

・快適で清潔な空間づくり
介護施設などでよく聞かれるお悩みが、特有の匂いです。入居している人の多くが長く生活する場所であり、我が家のような役割を担っています。少しでも居心地がよくリラックスできる空間であって欲しいものです。
施設のトイレや、入居者が集まる談話室などに香りを取入れることで、気持ちのリフレッシュ効果なども期待できます。アロマによっては空気清浄などの効果も期待できるので、快適な空間づくりのために香りを取り入れたいと考え、実際に行っている施設も増えています。

・認知症の予防と緩和
香りと認知症の関連は近年研究が進み、ADの超初期症状は嗅神経のダメージということがわかりました。それによって認知症の予防も可能な時代になり、予防媒体として欧州において長年に渡り医療現場で使用されてきた歴史(実績)と安全性が確認されている香り(精油)が注目されています。適切な香りを嗅ぐことで生体リズムの調整が期待できるようになり、高齢者が多く集まる施設では香りの重要性が求められています。

・介護者のストレス軽減

介護施設は気力体力勝負といわれています。その場で働いている介護者にとっても、たくさんのメリットがあります。気持ちがリラックスした状態で介護を行うこともでき、スタッフ同士の気持ちに余裕が生まれます。
施設内の雰囲気もよくなり、仕事の効率UPにもなります。介護者がリラックスしていることで、高齢者にとってもよいサービスが提供できます。

・入居希望家族や来所者への好印象

施設のエントランスが心地よい香りに包まれていると、入居を希望して見学に来た方や、来所者への印象がとてもよくなります。環境改善に気を配っている施設と印象付けられ、他施設との差別化や企業の印象度アップにも貢献します。特に高級施設の場合はこだわりの施設内設備と共に香りはマストのツールといえます。

追記

脳に直接伝わる香りのプルースト効果とは?

ある香りを嗅いだときに、その時、場所の「記憶」や「感情」を思い出すことを、プルースト効果と言います。フランス人作家マルセル・プルースト執筆「失われた時を求めて」の中に、焼けたマドレーヌを口にしたときに、幼い頃家族と過ごした思い出が蘇がえり、それをきっかけにプルースト効果と呼ぶようになりました。この効果は高齢者に応用出来、αピネンという成分を多く含む樹木の香りを嗅ぐだけで、昔の出来事や感情を鮮明に思い出し、精神が安定し、また記憶(脳細胞)が活性化し認知症の予防にも役立つといわれています。

歯科医院やクリニックに香りを導入するメリット

歯科医院やクリニックを訪れる人の中には、通院に対して苦手意識を持っている人や緊張している人もいるかもしれません。特に歯科医院を訪れる子供はそうではないでしょうか。そこでクリニックに香りを取入れることで、少しでもリラックスして待ち時間を過ごして欲しい、そんな想いから香りを取り入れる施設も増えてきました。
ただ、場所が病院ですので、明らかに人工的な香りを取入れると、なかにはかえって不調を訴える人も出てしまいます。そこでアロマなどの自然の香りをモチーフにしたもので、ほっとできる空間づくりの提供が必要になります。香りのなかにはリラックス効果を高めるものや、気持ちを明るく前向きにしてくれるものもあります。医療施設では特に香りの効果効能を意識しながら選ぶと、とても取り入れやすくなります。

クリニックの種類によっても異なりますが、産婦人科や心療内科など、治療の一環としてアロマセラピーなどの施術を行っているところもあります。

・待ち時間の体感の短縮とストレス緩和(時間錯誤効果)

・クリニックを覚えてもらえる効果、また選んでもらえる効果が見込まれる(近隣施設との差別化)

・消臭や抗菌など、空間の環境改善

・マスキング効果 患者さんが緊張すると言われる薬剤独特の匂いを、香りを使ってマスキングできる。

商業施設に香りを導入するメリット

・おもてなしとブランディング
商業施設では「お客さまへのおもてなし」を何よりも大切にしています。エントランスに香りを持ってくることで、その施設のイメージにもなり、気分良く滞在したいと思えるようになります。また長く滞在してもらえるということは、購買意欲の向上にも役立ちます。

・集客
香りは一度嗅ぐと忘れられずに印象に残っている人も多いものです。ふとした瞬間にこの香りは、○○施設の香りだ!といった具合に無意識のうちにその場所を覚えていてくれる効果があります。香りは安心感や馴染み感も植え付けます。同じような施設に行くならこちらに行こう。馴染みのある印象のよい香りは差別化に非常に役立ちます。

・滞在時間と売り上げ
香りが好みのものだと、つい長居してしまった経験はありませんか。香りには気分を向上させる効果もあります。もっと楽しもう!とアクティブで意欲的な気持ちに導いてくれるのも香りの効果です。その結果、商業施設では、施設内のレストランやカフェなどに足が向くなど、いかに滞在時間を延ばしたいと考えている施設にもポイントです。

働き方改革でオフィスに香りを導入するメリット

・オフィスの作業効率UPと従業員満足度UP
オフィスの課題として、社員のモチベーションを高めていかに作業効率を高めるのか?を大きな目標としているところもあると思います。オフィスに香りを取入れることで、オンオフの切り替えが可能になり、やる気スイッチが入れやすくなったと感じる人もいます。また、来社されるクライアントからも香りを褒めてもらえることもあり、会話のきっかけになるなど企業としてもプラスになったと感じるケースもあります。
作業効率を高め、社員が意欲的に働いてくれる空間は、どこの会社も理想としている部分なのではないでしょうか。

・疲れをリフレッシュさせる
オフィスで働いている人のなかには、日々お疲れが蓄積されてしまっている人も少なくありません。社内で疲れやストレスを少しでも緩和しつつ、リフレッシュさせたいと思うのであれば、香りが効果的です。
香りのなかにはリラックス効果が高いものもありますし、不安を解消させ、気持ちの安定に繋がる香りなどもあります。

・消臭、抗菌作用
香りのなかには、消臭、抗菌や抗ウイルス作用などが期待できるものがあります。オフィスの空気は滞りやすいので空気の清浄にも繋がり、消臭効果も期待できます。
オフィスのなかにはさまざまな匂いがありますが、香りを取入れることで匂い対策にもなります。(化粧室やロッカーなど)(喫煙所がある場合は、その付近など)

また、コロナのようなウイルス対策にも繋がるなど、空間の正常化として、嬉しい効果も期待できます。

メモリアルホール(葬儀場)で香りを導入するメリット

ご遺族参列者にとって悲しみを癒し、故人との思い出溢れる一日を

・故人を偲び、ご遺族を慰め、参列者に感謝の香りを添える
香りは脳に直接作用するため、五感のなかでも最も記憶に残ると言われています。昔嗅いだ匂いをふとしたときに思い出し、当時の記憶を懐かしんだ経験もあるのではないでしょうか。精油には、供養や悲しみを癒す力を持った植物もあり、その場の雰囲気を優しく包んでくれる力もあります。

・少しでも心穏やかに
悲しみの中、故人を無事に送り出すために、ご遺族のご苦労・お疲れは図り切れません。当日は悲しみや緊張が混在しながら様々な事柄に追われていることと思います。優しい香りに包まれ、肩の力を抜いて故人を見送って頂くためにも香りの演出はとても自然なことです。

引き出物の袋やカードにほのかに香り付け
参列者が帰宅した後も袋やカードを手にとって、故人を偲んで頂き、いい式だったと思ってもらえる温かな空間演出が出来るのが香りです。

・香る受付
参列者の緊張を解き、お見送りに相応しい温かな雰囲気づくりが可能です。

ウェディング施設で香りを導入するメリット

主役はおふたり。でも招待されたゲストにも特別な一日を

・より特別で印象深い一日に
香りは脳に直接作用するため、五感のなかでも最も記憶に残ると言われています。昔嗅いだ匂いをふとしたときに思い出し、当時の記憶を懐かしんだ経験もあるのではないでしょうか。ゲストにとっても結婚式での香りを通して、素敵なひとときを思い出してもらえるようになります。

・新郎新婦にとっても前向きな気持ちに
幾度となく重ねた打ち合わせでようやく迎えた当日。新郎新婦の多くが、この日を楽しみにしていると同時にとても緊張しているものです。好きな香りに包まれ、肩の力を抜いて最高な一日にして頂けます。

・香りづけしたフラワーシャワーで祝福

引き出物の袋やカードに香り付け
おもてなしの心は最後まで。ゲストが帰宅した後も袋やカードを手にとって、参加して良かったと思える空間演出が出来るのが香りです。

・香る受付
晴の舞台に相応しい、より華やかな雰囲気が演出できる。

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